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角丸飾り

ジャーナル No.61

第12回総会を5月22日に開催

“労働組合主導の参加型安全プログラム”に今年から挑戦

工藤和男理事長は第12回総会開催にあたって、H19年度の労働災害死亡者は90名と着実に減少しており、各職場の取り組みの成果が現れている。今後も労働の多様化に対応してメンタル問題や非正規・未組織への対応が求められている。「安全・健康と人材育成にコストを惜しむべきではない」とよく言われるが、安全問題は成果の出にくい分野であっても、着実に進める必要がある。センターは「働く者の安全と健康第一」の設立趣旨に添って努力を続けたいとあいさつしました。

また、続いて、連合本部古賀事務局長から「今年は2回の全国大会等が北海道である。サミットを含め北海道が注目される年だが、引き続いて活躍を期待する。6月に愛媛にセンターができた。全国交流を支援する」とのメッセージが披露されました。

この1年間の経過は折戸良治事務局長が、「4月から11次防が開始された。労働災害死亡数の目標は70人台になる。業界ごとの目標も決められるだろう、一層の努力が必要となる」と情勢を述べた後、研修・セミナー活動では、全道セイフティーネット集会(07年12月)ではメンタルヘルス対策、全道安全衛生担当者会議(08年3月)ではマネジメントシステムの実践として“POSITIVE”について、労災防止指導員研修会(07年10月)では初めて支笏湖周辺の森林現場を視察するとともに、林業現場におけるパトロールの実際について、医師との懇談会(08年3月)ではメタボリック問題を取り上げた。また、産別・地協などのセミナーも10カ所で開催され、主にメンタル問題が中心的に扱われたセミナーとなっている。その他、メンタルヘルス相談コーナーでは、年間35件受けているが、リピーターが多くなっている。夕張での職員相談にも、カウンセラー協会と連携して取り組んでいると報告し、了承されました。

08年度の活動方針では、@11次防のスタート、Aマネジメントシステムの本格化、Bメンタル問題の深刻化等の情勢を確認し、「連合労働安全衛生取り組み指針」に沿って、実態調査を4年ぶりに実施することや、引き続き研修・セミナー活動と調査研究に取り組み、医療生協の「職業病センター」や産業カウンセラー協会との連携強化など活動の継続とともに、東南アジアの労働組合で実績を重ねてきた“POSITIVE(労働組合主導の参加型安全衛生向上プログラム)に取り組むための調査研究に、連合本部とともに取り組むことを新規事業として予定することにしました。

札幌緑愛病院「職業病センター」1周年のシンポを開催

振動病やじん肺・アスベストなどの現状をつきあわせ

6月7日、かでるホールにおいて、医療生協 札幌緑愛病院の職業病センター(本田 哲史所長)の1周年を記念するシンポジウムがおこなわれ、産別をはじめ、振動病患者やアスベスト被害者団体など400名が参加しました。

シンポジウムは特別講演として「過重労働とうつ病」の題で緑愛病院の氏原久充医師が、わが国の年間3万人の自殺者は世界3番目であり、95年頃から急激に増加した。過労とうつ病は密接な関係があり、職場の機能不全が精神的な疲労を拡大し気分障害の患者はまもなく100万人になる。特に治療初期の2週間は自殺に要注意。早期の受診が必要なことはもちろんだが、「病気になったことを教訓に自分の生き方を再検討することが再発防止につながる」ことを心に刻むべきだ。

講演1として高知市の勤労クリニック近藤真一医師は、振動病をめぐる国の方針は「打ち切り」の一語に尽きる。S52年の307号通達、S61年の585号通達、H8年の35号通達と基準を変更して患者を労災から追い出すことをめざした取り組みを強化している。最近ではハイテク機器を導入し、患者の訴えを否定しようとしている。しかし、患者一人では国も動かないが、団体となると動かざるを得ない。森林労連などで交渉を強めよう。

講演2として中皮腫・じん肺・アスベストセンターの名取雄司所長は、じん肺もアスベストも目の前の作業だけが問題でなく、広範囲な2次飛散に気を配るべきだ。被害が拡大する危険が大きい。じん肺は治らない病気というのは言い過ぎで、悪化の速度をゆるめることはできる。じん肺は合併症で死亡する例が多い、早期に発見し早期治療が必要。アスベストは被爆が終わってこれからが発病の上昇期を迎える、はたして「新法」だけでいいか疑問もある。アスベスト被害はほとんどが労災であり、労働側が活動を強めるべきだ。

講演3は「クボタショックから3年 石綿被害救済の現状と課題」で関西労働者安全センターの片岡明彦さんが、アスベストの住民被害問題について、新法等の整備はできても救済されるのはほんの一部でしかない。しかも時効の壁があり、被害はこれから急速に広まることが予想されているのに対策は追いつかない状況だ。また、中皮腫の認定はある程度高率だが、肺ガンや石綿肺の認定は低い。国は新規認定事業場を隠蔽するなど十分対応しようとしない。認定基準の緩和など企業と国家の責任追及には立場を超えた連帯が必要だ。

引き続きのシンポジウムでは、先ず、じん肺患者である山川八洲雄氏(札幌じん肺友の会副会長)から北海道石炭じん肺訴訟運動の経過報告がされ、同時にいま「虚偽申告」問題が取りざたされていることについて、本当の被害者が疑われることの無いよう友の会の活動を強化するとともに、じん肺に関する一般の理解促進を求めました。次にアスベスト被害で夫を亡くし、事業主を相手に損害賠償請求訴訟中の一宮美恵子氏(中皮腫・アスベスト疾患患者と家族会北海道代表)から体験報告がされた。その後、職業病センター本田所長のコーディネートで、参加者からの質問について各パネリストから回答され、北海道のじん肺・アスベスト被害の現状や、労災補償についての取り組み方について参加者とともに考え、「労災問題を個人で取り組むのは難しい、集団になると行政も動く」と締めくくられました。

なお、緑愛病院職業病センターと北海道勤労者安全衛生センターは合同でこのシンポの報告書を作成し、公開する予定です。

安全衛生センターのビデオ・DVD等をご利用ください

センターでは毎年資料を購入しています。現在はMS(マネジメントシステム)−4本、建設関係−12本、交通−3本、石綿−3本、メンタル(パワハラなど)−3本、安全−14本、衛生−1本の42本のビデオなどを保有しています。ぜひご利用ください。
ビデオ・DVD等一覧表(PDF)

なお、センターに必要と思われる資料がありましたら、検討のために情報をお知らせください。

TEL011−210−0050(連合北海道 組織労働局 松浦・宮本)

民間林業労働者の労働条件実態調査報告書

経済的理由で規制を無視!の実態 振動病根絶をめざそう

全山労北海道本部では07〜08年にかけて全道145人の民間林業労働者から労働条件の実態を聞き取りした。この調査は99年から9回目になるが、この間の実態を見ると、6ヶ月から11ヶ月の小間切れ雇用が全体の65%で、チェンソー・刈払機の通達規制2時間が実際は2〜7時間となっており、今後も振動病の発生が懸念されている。

同調査をもとに04年には当時北大に在学し、現在は山形大学講師の早尻正宏先生が、「労働科学」に「森林管理レジームの転換期における林業労働者の状態」を発表されているが、特に注目しているのは、調査が直接に労働者を対象にしていることで、「林業労働者を、雇用事業体を通さずに、直接調査したものはあまり蓄積が無く貴重な学術資料といえる」と評価している。

また、早尻先生は労働安全の面から実態について、「チェンソーでは規制範囲の2時間以内は23.2%、ブッシュカッター(刈払機)では24.3%程度で、慢性的な仕事不足によりぎりぎりの要員と出来高制の賃金の残存により、規制はなし崩しになっている」と指摘している。

労働時間についても、チェンソーでは平均3.98時間、ブッシュカッターでは4.27時間でおよそ規制時間の倍になっているが、振動障害の早期発見に結びつく特殊健康診断(通達は6ヶ月毎)は、採用時にも受診していないが18.1%もあり、経年でも「受けない」と「受けさせてくれない」を合わせると男で11%、女で22%あることが回答されている。この結果、白ろう現象の自覚が男で約30%に見られる。

この実態の改善には、公的森林の所有者(国等)が仕事不足の解消につながる計画的な施業や労働安全管理の徹底指導が必要だろう。森林労連と全山労の取り組みに期待し、振動病の根絶を実現したい。

角丸飾り

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