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角丸飾り

ジャーナル No.63

年頭あいさつ

2009年を飛躍の年に

北海道勤労者安全衛生センター 理事長 工藤 和男

明けましておめでとうございます。
会員の皆様におかれましては、希望に満ちた新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
また、昨年中は当センターの事業に格別のご理解とご協力をたまわり、心から感謝申し上げます。

さて、まず昨年をふり返りますと、第11次労働災害防止計画(11次防)がスタートした年でありました。11次防は平成24年度までの5年間の計画として、@死亡者数の20%削減、A死傷者数の15%削減を目標に掲げて、勤労国民全体が取り組むことをめざしています。確かに平成20年末までの結果は、死亡災害が昨年に比べ14.6%の減少となっていますが、建設業と製造業では逆に増加しているなど、より一層労働安全衛生の取り組みを強化すべき面もあります。
当センターの事業としては、衆議院選挙が予想されるなかで全道セイフティーネット集会の延期など、十分な事業実施ができませんでした。何とか今年度中に計画を達成すべく努力を続けますので、各位の一層のご協力をお願いいたします。

そして今年については、リスクアセスメント・マネジメントシステムのより一層の普及を心がけるとともに、新たな取り組みとしてPOSITIVE(労働組合主導の参加型安全衛生向上プログラム)の開始を予定しているところであり、連合本部やJILAF(国際労働財団)の協力を得て、何とか北海道において定着できるよう、準備を進めたいと考えています。 また、年末におおいに国民の注目を集めた“非正規・派遣労働”問題についても、安全衛生の観点から取り組むべき視点が大きいと考えています。特に製造業における労働災害の増加にはこの非正規問題が影響しているのではないかと考え、連合北海道非正規センターなどと連携して、実態の解明と対策を提案したいと考えています。 そのほか、“メンタル問題”についても、いまだ増加傾向にあり、これに関連して雇用の維持・職場復帰にあり方などについても、センターの視点から考えてみたいと思います。

このように課題は山積しておりますので、会員各位のご理解とご協力が一層重要と考えます。新しい年においても、皆様のご鞭撻をお願いし年頭のあいさつといたします。

リワーク(職場復帰)フォーラム

支援者の連携と支援プログラムで成功例が!

12月4日、札幌サンプラザで、独法「障害者職業センター」が主催する“リワークフォーラム”に参加しました。「ウツ病」などの感情障害により、就業者の0.4%が長期休養していることは、蔓延する腰痛などとともに産業にとって大きな損失となっており、MS(マネジメントシステム)など原因を解消する様々な取り組みとともに、不幸にしてそのような病気になってしまった労働者の職場復帰を円滑に、また成功裏に行うことは多くの職場での関心事です。このフォーラムの報告から多くの示唆をいただきましたので、報告します。

<基調講演>
“心の健康不調者の職場復帰をめぐる諸問題”

NPO勤労者の心の健康づくり協会会長 久村 正也 医師

心の健康不調者が多発してきたのは我が国の雇用の変化が要因としては大きい。それは、終身雇用から有期雇用へ、年功序列から成果主義へ、ゼネラリストからスペシャリストへということである。不調の状況は感情障害(ウツ病など)、不安障害、神経症などがある。
一方で、若年者などの職場不適応も多くみられる。ウツ病と職場不適応はウツが内向きなのに対し、職場不適応は外向き(外部に理由を探す)の点が違うし、ウツは治療に向かうのに対し、職場不適応は配置転換や転職で快癒することが多い。
厚生労働省はこのような心の健康不調者の多発に対し、職場復帰を円滑にするため、2004年10月に「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きについて」(PDF)を出した。
この手引きによると、五つのステップで進めることになっている。しかしこの手引きのなかにも様々に留意点があるのでそれをいくつかあげてみたい。
まず大事なことは上司などの「気付き」である。変調の早期発見が大事であり、その後は対策を関係者で連携して情報共有することと、対策の始めから職場復帰が同時にベースとなるべきである。
しかし、以下の点で留意すべきである。

主治医との連携は大事だが、医師の診断書は病状の評価にすぎず、「職場復帰」の可能性を示すもの。実際の職務に復帰することまでは考慮していない。→職場復帰用の診断書
再燃・再発防止にはリハビリ出勤や試し出勤などに取り組むべきだが、企業のなかにその制度がない場合、労基法上の労働者性に問題が出る。→復帰サイクルを想定した特別措置など就業規則上の位置づけ
本人・主治医・産業医・人事担当・職場上司など支援関係者による判定委員会を設置すべきであり、その際、本人の意欲がまず第一義となる。
以上のようなことを考慮して職場復帰を進めることとなるが、中間施設(リワーク支援センター)の利用も重要である。それは、多少の治療効果がみられた段階で、本人が一番不安に思うことは“何もすることがない”ことであり、支援センターでの集団の効果により、生活リズムや自己管理法、対人関係の回復、不安の整理など実習を通じて良好な効果を期待できるからである。

続いて「リワーク支援を通じた事業場と医療のつながり」をテーマにシンポジウムを行いました。これは、よつ葉乳業で職場復帰に成功しつつある女性をめぐって、主治医(=産業医)と人事担当者、支援センターの3者から13ヶ月にわたる休職中の諸問題と対処についてそれぞれの視点と立場からの取り組みが報告されました。

主治医であり産業医でもあった小林医師(神経科)からは、病状の詳しい説明の後、「リワーク事業の利用は、社内制度によるリハビリは困難であったことと、生活リズムの確立が改善には重要であること。また、社会復帰にはストレスなどの自己対処能力を向上させる必要があり、なんにしても本人と医師と意思と職場の合意があったことで踏み切りました。」と、復職支援態勢がない職場でも、このような外部資源の活用が有効であることが、医療専門家からも認められました。
よつ葉乳業の人事課の西山氏からは、「年休対処後の欠勤扱いでは、“欠勤容認期間”が比較的長めにあるので十分対処できたが、支援センターの中間報告書(3ヶ月毎)などきめ細かい対応が本人と会社との連携を強めたのではないか。職場復帰後も通院時間の確保や風邪等の体調不良には休みが取れるようにして調整しながら働けるようにしている。」など、柔軟に対応することの必要性とともに、本人との連絡が重要であることが述べられました。
障害者職業センターの復職コーディネーター奥村氏からは、「体調に合わせて支援計画は変えていく必要があるし、本人と十分話し合って回りの期待と本人の可能範囲とのズレを修正する必要もある。」など、関係者の連携と本人との会話のなかで柔軟に対処している様子が紹介されました。支援センターは札幌と旭川の2カ所にしかありませんが、リワーク支援は札幌のみのようです。札幌以外の土地からの利用に際しては宿泊補助もあるようです。

このシンポジウムは中身の濃いものでした。復職に関わる制度は政府にも、会社にもほとんどありませんから、これから整備することが大事ですが、「元の職場復帰が原則」「職場復帰と職務復帰は違うもの」など、運動を進めるたち立場からも気をつけることがいろいろ話されました。
最後にはご本人からの手紙が紹介され、職場との距離が遠くなることが一番気がかりであり、関係者の連携がありがたかったと述べられました。
当センターでも職場復帰プログラムに関する経費問題など公的制度について運動を進めていますが、同趣旨の報告勉強会も開催できるようにしていきたいと考えています。

<メモ>
北海道障害者職業センターによるリワーク支援とは

休職者とその企業の双方に対するサービスである。
支援の要望(本人・事業所・主治医)→コーディネート→三者の合意→センター内支援→リハビリ出勤等の支援→フォローアップの流れ。
平成16年度から実施して、終了者は32名、復職率63%、平均支援期間6.2ヶ月
利用経路は事業所53%、主治医40%、本人7% などの状況

※詳しくはこの資料が参考になります。> 「職場復帰支援(リワーク支援)─ご利用者の声─」(PDF)

POSITIVE 解説 その2

POSITIVE?って シリーズ2
徹底した“現場主義”で複雑なリスクを共有化する

POSITIVEを実際にどういうエリア、領域で取り組んでいるかといいますと、労働安全衛生の中を六つの領域に区切って改善の領域を設定しています。物の運搬と補完、ワークステーション(仕事場)、機械の安全、作業環境、福利厚生施設、環境保護の六つです。今日本でも非常に問題になっていますけれども、アジアでもこの環境保護が遅れていますので安全衛生の領域の中として、企業活動の中として取り上げて、この六つの領域の中でそれぞれ改善提案をしていくという形にしていきます。

POSITIVEに適した職場とは

規模は50人くらいで地域の象徴的な産業の製造業が一番いい。
印刷・製本、車両整備工場、住宅建設、食品工場(パンなど)、学校給食、介護・病院など装置産業でない職場が適している。
実際にトレーニングのテキストもできていまして、「チェックリストと改善」を参加者に配り、どのようにして改善していくかというマニュアルもあります。マニュアルは英語版が出ていますけれども、今では各国版ができています。

それから、そういうトレーニングを実行するためのトレーナーを養成するというのが非常に重要になってきますから、そのトレーナーのためのマニュアルもあります。そのトレーニングを実行するためのトレーナーのガイドというものができています。こういうものを使っていきますと東南アジアでも日本の援助なしで、自分たちだけで実行できるということになっていきます。

なぜこのようなトレーニングが始まってきたかということですけれども、背景としては労働安全については自主対応でいきましょう。今のマネージメント・システムが養成されている状況と全く同じなんですけれども、その中で特に『現場参加による継続的な改善』というのが非常に重要な柱になってきます。 現場の参加をいかに大勢の人間をその気にさせるかということが重要になってくるのでこういうトレーニングが生まれてきたということがいえると思います。

リスク対策という面であると思うのですが、今まではきちんと「どういう危険があるか」ということが目に見えていて、その危険に対して特定の対策をするというアプローチでよかったのですが、昨今の労働現場をみますといろいろな問題が複雑に絡んだハザードといいますか、リスクがあって、それに対しては同時多面的に複合的にリスク対策を立てる必要があります。 先ほどあげました六つの領域の中の、それぞれのチェックポイントというのはそういう複合的なリスク対策に役立つチェックリストという形になっています。

(つづく)

角丸飾り

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