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角丸飾り

石狩地協・札幌地区連合「メンタル4回連続講座」
職場で困らない「発達障害」との付き合い方

 9月29日、石狩地協・札幌地区連合の主催する「メンタル4回連続講座」の最終回で、日本産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの福島 誠さん(そこつネット代表)が、発達障害とのつきあい方について講演しました。

「発達障害」と人間の発達

 まず、「障害」というものについて、人間の一生を見ると、赤ん坊のうちは様々な五感障害があり、発達によって健常になるが、老人になるとまた障害者になることを考えると、五感と社会性が年齢相応であるかどうかの基準以外は、すべて「発達」のアンバランスといえるのではないか。いわゆる発達障害については、「脳の発達度合がアンバランスであること」と定義され、大きくわけて三つのグループに分けられる。@LD(学習障害)は一般的な職場にはあまりいないが、識字率の低い時代には普通に暮らせた。AAD/HD(注意欠陥・多動性障害)は10分とじっとしていられない人のこと。BPDD(広汎性発達障害)のグループとして、自閉症・高機能自閉症はIQ(知能指数)の違いによる。アスペルガー症候群(AS)は目から上では決して笑わない自己中心的な人が特徴であるなど、それぞれ微妙な違いであることが説明されました。特に軽度の発達障害者は「不器用」といわれてきたとも。また最近は特定不能のPDDも少しずつ増えているようです。

発達障害で本人や「まわり」が困ること

 脳の発達がアンバランスなことから、発達障害者には多くの特徴があること。それは、@他人の気持ちに気づかず、「空気を読めない」行動を取りやすい。特にAD/HDでは興味があちこちに移りやすく、ASでは本当に人の心が読めない。A特定の感覚が過敏すぎて他人と共同行動を取れないこと(感覚過敏)がある。例えば、シャツの裏のタグがチクチクして痛くて耐えられないだとか、食物の舌触りが気になって好き嫌いが多い、他人に触れられるのがイヤ、耳からの刺激で疲れるのでスーパーや家電店がダメなど。B朝起きられない・夜眠られない(睡眠障害)の結果、夜遅くまでインターネットやゲームをしてしまう。Cやらなければならない課題を仕上げられない、仕事や勉強でうっかりミスが多い、失敗で怒られた経験ばかりが多く、何をやってもダメな自分だと思い込んでいるなど、それまでの人生で「成功経験」が少ないため、否定的思考に陥りやすいことも特徴とのことでした。
 特にアスペルガー症候群(AS)で困ることは、@ルールへのこだわりが強く、職場の決まりを守らない人を上司に抗議して自分がクビになる。A場の雰囲気が読めない(KY)ので、雑談ができないため、会社や学校の休憩時間で何をしたらいいのかわからない。B予定変更が苦手で、突然にスケジュールが変更されるとパニックになり、その結果として自傷に走ることもあります。
 ただ、障害か、そうでないかは非常に微妙で、うんと困っていれば「ふつうの障害者」に、普通に困っていれば「発達障害」の人、あんまり困ってなければ「発達障害ぽい人」と考えればよく、困ってない、あるいはちょっと困りながら暮らしている人は多いようです。この「発達障害ぽい人」は芸術家やスポーツ選手などに多いようですが、精神科医が診断をつける境目は非常に微妙とのことでした。

「どのようにして援助するか」・・・付き合い方

 では、そのような特徴を持つ人自身が気をつけることや、まわりがどのように対応するかについては、@あいまいなルールをきちんと整備する=マニュアル化、暗黙の了解は苦手で理解できない。Aスケジュールを明確に=この仕事のこの部分はここまでに、というふうに。B忘れっぽいので、メモなど見えるところなら忘れない=メモ化して見えるところに。C業務指示はなるべく文書やメールで(電話や口頭だとよくわからないまま「はい」と返事をしてしまうことがある)=耳からの情報処理が弱い(フィルター機能が弱い)。D仕事は細かい単位にわける。などの多少細かい対応をすると、うまく仕事をこなせる場合が多いと言うことでした。
 発達障害を持つ人には、「ネットワーク型思考人間」が多いそうで、ツリー(シーケンシャル)型人間と比較して、企画をたてることや自由に発想すること・工夫することなどが得意なこと。また、相似に気づく連想(多方面へのリンク)が得意で、あいまいや混乱の思考に耐えることなどの特徴から、「反応する」こと、特に緊急時には対応力が早いとされています。

大事な本人の「自覚」とまわりの認識

 最後に、「発達障害とつきあっていくために」では、本人が自分の特徴と向き合って、良好なコミュニケーションを意識することや、コミュニケーション能力は一生の幸福度を左右すると考えて、あいさつが大事なので、そんなに親しくなくてもあいさつはしたほうが良いだとか、「プライドは自分自身を食べる虎」を教訓に、自分に正しい自信を持つ(そんなにビッグではない、でも全然ダメでもない)こと。苦労しないで、工夫しよう、苦手なことと正面衝突しないで、やりすごす方法を工夫することが大事とのことでした。
 実は、福島さん自身も発達障害と診断されていて、自分の欠点を補完する工夫を様々に(例えば忘れ物防止に腰バックに大事なものを全て入れるなど)しているそうです。これは「5分先の自分は他人(忘れてしまうことを前提とした特徴)だから、頭ではなく身体で覚える工夫をしたことで物忘れが少なくなったということでした。会場からも、参加者自身が、あるいは職場の近くにいる「ちょっと変わっている人」に思い当たるようで、上手なつきあい方を会得した学習会でした。



 この連続学習会は、メンタルと労災保険(2回)、職場復帰の支援制度、そして今回の発達障害が内容でした。うつなど気分障害患者の8割は何らかの発達障害が見られるという報告もあります。人口減少と高齢社会の中で、社会を維持していくためには、より賢い「ちょっと変わっている労働者」とのつきあい方に職場や社会がなれることが必要です。また、いままでの社会では、「ちょっと変わっている」が黙々と仕事をする「職人気質」が重宝されていたのに、誰でも出来るマニュアル化がこのような性格的な特徴を際だたせてきており、お互いに認め合う社会の「包摂」が求められるとも感じました。

角丸飾り

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